「不動産の価値を2倍、3倍にする発想」
不動産の価値は、見せ方やターゲット設計によって大きく変わります。同じ建物、同じ面積の不動産であっても、その価値を2倍にも3倍にも引き上げる発想が存在するのです。
ひとつの事例をご紹介しましょう。
上層2フロアが約150平米のレジデンスで、最上階のみのプロデュースを依頼された案件がありました。私たちは単なる空室対策ではなく、「どのような人に住んでもらうのか」から設計を組み立てました。最上階には、住んだときの生活が具体的にイメージできる家具や設えを整え、希少性の高い家具付き賃貸レジデンス、いわゆる「サービスアパートメント」として再構築したのです。
結果として、上から2番目のフロアが月額130万円で募集されていたのに対し、最上階は250万円という賃料設定が実現しました。同じ建物、同じ面積でありながら、価値の見せ方とターゲット設計によってここまで数字が変わったのです。
海外では家具付き賃貸は一般的ですが、日本ではまだ発展途上の分野です。
しかし、富裕層にとっては「すぐに完成された空間に住める」こと自体が大きな価値になります。これは「時間を買う」という発想にほかなりません。
不動産の価値を最大化するためには、既存の延長線を越える視点が必要です。
たとえば、9階建てで全20戸ほどのレジデンスを想像してみてください。もっとも広い住戸でも約60平米、下の階は30〜40平米程度という構成の場合、主な入居者は単身者となり、設定できる賃料にはどうしても上限が生じます。
一方で、もっとも狭い住戸が60平米、さらに120平米や200平米といった住戸が存在する建物であれば、入居者層は大きく変わります。
想定されるのは、富裕層ファミリーや外国人富裕層です。それなりの家賃を支払える人しか住めない建物になることで、入居者層が引き上がり、マンション全体のクオリティも自然と高まっていきます。共用部のラウンジにはより質の高い空間が求められ、エントランスのファサードも高級レジデンスの設えへと変わっていく。一部屋の設計変更が、建物全体の価値を連鎖的に引き上げるのです。
こうした価値の上がり方を想像できる背景には、富裕層の根底にある「時間価値」という考え方への深い理解があります。富裕層の方々は、とりわけ自らの時間価値を大切にしています。同じ1時間であっても、その時間にどれほどの価値が生まれるのかを常に意識しているのです。
過ごす場所についても同じで、旅行先のホテルでは最上級のサービスを受けたいと思うのも、時間価値を大切にしているからです。
「同じ時間を過ごすなら、最高の体験をしたい、最高のサービスを受けたい」
と考えて選択しています。
これは「お金があるから贅沢する」という話ではありません。自分の持つ時間をどう使うか、その価値を理解しているからこそ、時間の質を高める選択をしているのです。
不動産も同じです。価値の高い物件を選ぶのは、単に場所を持つためではなく、「そこで過ごす時間の価値」を高めるためです。家具や空間づくりにこだわるのもただのインテリア選びではなく、その場所で過ごす時間を快適に、豊かにするためなのです。
このような富裕層の「時間価値」や「情緒的価値」を深く理解し、具体的な空間設計に落とし込むこと。それこそが、不動産の価値を最大化し、富裕層を魅了し続けるための真の鍵となるのです。
