平均年収の人では都心5区に住めなくなる
投資の世界では、日経平均株価と不動産価格指数は密接に連動していると言われています。
不動産価格指数は株価の動きよりも半年から1年ほど遅れて動く傾向、いわゆる遅行指標であるとされていますが、おおむね同じ軌道を描きながら推移していきます。
2025年10月末、日経平均株価は5万2000円という過去最高値を更新しました。この株価上昇という大きな波の理屈で考えれば、途中で多少の乱高下はあったとしても、都心の不動産価格にはまだまだ上昇余地があると言わざるを得ません。
実際に、不動産価格の高騰はさまざまな形で現実の社会に影響をもたらしています。
その象徴的な出来事のひとつが、2025年7月に千代田区が公表した「マンションの転売規制」です。
これは、マンションなどの賃料高騰に業を煮やした千代田区が、購入者が引き渡しを受けてから原則5年間は転売できないよう、特約を付けることを不動産協会に要請したというものです。
その背景には、外国人による投機目的のマンション購入が増え、人が住んでいない物件が増加したことがあります。外国人や富裕層が投機目的でタワーマンションを購入する一方で、賃貸で住んでいる人以外は誰も住まず、空室が多い状況が生まれ、安全面への懸念も高まったことが、この規制に踏み切った理由です。
また、賃貸物件を購入した中国人投資家などが家賃をいきなり2.5倍に引き上げ、それまで住んでいた方々が更新できずに退去を余儀なくされるケースが増えているというニュースも話題になりました。不動産価格指数が上がっていることで、このような事態が現実に起きるほど、都心の家賃は跳ね上がっているのです。
このような状況の中で、とくに東京の「都心5区」と呼ばれる港区、千代田区、中央区、新宿区、渋谷区には、今後さらに人が集まってくることが予想されます。
その背景には、地方都市が抱える現状があります。
大阪、名古屋、広島、仙台、福岡といった一部の主要都市を除き、地方では仕事の選択肢が年々少なくなってきているのが実態です。
とくに女性の場合、その選択肢はさらに狭まり、介護や医療、保育など、社会機能を維持するために不可欠な「エッセンシャルワーカー」にならざるを得ない状況が増えていくでしょう。そうした背景から、多様な仕事を求めて必然的に東京へと人が集まってくるのです。
しかし、人がどれだけ集まろうと、都心5区の不動産供給には限界があります。需要が高まり供給が追いつかなければ、価格は必然的に上昇します。
その結果、都心5区には「平均年収の人は住めなくなる」という厳しい現実が待ち受けています。令和6年の平均年収は478万円ですが、すでに港区などに住むことは非常に困難になっています。
東京の都心5区に住むことが、一部の限られた人たちだけの「憧れ」になる時代は、すでに始まっているのです。
