富裕層も巻き込まれる「二極化」の恐ろしさ
近年、日本国内において「富裕層」と呼ばれる人たちが急激に増えていると言われています。その背景には、いったい何があるのでしょうか。
最大の要因は、アベノミクスやコロナ禍の財政出動による「マネタリーベース(市場に供給されている資金量)」の圧倒的な増加です。市場にあふれ返った膨大なお金が、世界から見て割安と判断された日本株や不動産に流れ込みました。
その結果、これらの資産価格が上昇し、保有している人たちの含み益が大きく膨らんだと考えるのが自然です。
実際のところ、数十年単位の超長期にわたって株式や不動産を持ち続けてきた人は、驚くほど大きく資産を増やしています。たとえば日経平均株価を例にとると、1950年から株式を保有し続けていた場合、現在その価値はおよそ500倍にまで膨れ上がっています。株価と不動産価格は連動する傾向があるため、仮に同じ1950年に1000万円で土地を購入していたとしたら、現在それが50億円になっていてもまったく不思議ではないのです。
野村総合研究所の調査などを見ても、1億円以上の資産を持つ「富裕層」や5億円以上の「超富裕層」の世帯数が増加する一方で、3000万円以上5000万円未満の「アッパーマス層」の世帯数は減少しているというデータがあります。
この「富裕層が増え、アッパーマス層が減る」という現象は、社会全体の構造的な変化、すなわち「資産の二極化」のあらわれにほかなりません。
ここで重要になるのが、「インフレ」というキーワードです。「失われた30年」と呼ばれた長きにわたるデフレの時代はすでに終わりを告げ、日本は明確にインフレの時代へと突入しています。
もし年2%のインフレが継続した場合、現在1億円を現金(預貯金)のままで保有している人が30年後に買えるモノやサービスの量は、現在の価値に換算して約5500万円分にまで目減りしてしまいます。現金でお金を持っているだけでは、インフレによって実質的な価値がどんどん下がってしまうのです。
インフレに強い実物資産である株式や不動産を保有している人は、物価上昇の波に乗ってさらに富を増やしていきます。一方で、現預金のみで資産を持ち続けている人は、価値の目減りによって相対的に貧しくなっていく。
持っている人はより裕福に、持っていない人はより貧しくなるというこの二極化の波は、今後さらに激しさを増していくでしょう。
現在すでに富裕層と呼ばれる方々であっても、決して油断はできません。時代の変化、とくにインフレという新たな環境を敏感に察知し、資産の組み替えなど適切な行動をとり続けなければ、これまで築き上げた資産を守り切れない時代に入っているのです
