不動産市場で流動化しているのは「上の層」だけという現実
不動産市場の流動化が進んでいると言われていますが、実際に市場で活発に動いているのは誰なのでしょうか。都心の不動産価格が高騰し続ける中、一昔前によく言われていた「サラリーマンが不動産を購入する際の目安は年収のおよそ7倍」という基準は、もはや過去のものとなりました。
年収1000万円であれば7000万円程度の物件が買えるという計算でしたが、現在ではその基準で都心の不動産を購入することは非常に難しくなっています。実際には、年収の10倍程度まで予算を引き上げなければ都心の優良な不動産は手に入りません。世帯年収が3000万円ほどあるパワーカップル(夫婦ともに高収入を得ている共働き世帯)で、ようやく手が届くかどうかという厳しい水準まで価格は高騰しているのです。
このように不動産そのものが高騰し、一般の人にはなかなか手が届かなくなっている状況下において、不動産市場で実際に動いているのは、いわゆる「上の層」の方々です。
具体的には、アッパーマス層以上、とくに1億円以上、場合によっては5億円以上の金融資産を持つ「富裕層」や「超富裕層」といった限られた層の間で、不動産が活発に取引されています。
彼らがこれほどまでに不動産を買い求めている背景には、株高による資産の増加があります。株高によって含み資産を大きく増やした富裕層やパワーカップルが、実需あるいは投機目的で都内のマンションを購入しているのです。
さまざまなデータを見ても、不動産価格は依然として上昇傾向にあり、中古マンションであっても1年で38%も上昇しているといった数字がニュースで取り上げられるほどです。
株高を背景に、豊富な資金を持つ富裕層が優良な物件を積極的に探しているというのが、現在の市場のリアルな姿です。
さらに、この流動化を後押ししている要因は他にもあります。ひとつは、地方の富裕層や海外に居住する富裕層が、セカンドハウスとして都心部に不動産を保有する傾向が強くなっていることです。
そしてもうひとつは、地方の経営者の方々が、事業承継対策の一環として都心の不動産を購入・保有するケースが増えていることです。
つまり、いま不動産市場で起きているのは、このような上流層のなかでの「不動産への資産の組み替え」なのです。
株高で得た利益や余剰資金を、より安全で価値の落ちにくい都心一等地の不動産へと移し替える。この資産防衛と運用の流れが、現在の不動産市場を牽引し、形づくっています。
一般層には手が届かない価格帯へと上昇する一方で、富裕層の間では活発な取引が行われ、資金が循環し続けている。この構造的な変化こそが、都心不動産市場の現実なのです。
